今回は、日本と関係の深いロードバイクメーカーである、「フジ」を解説していきます。
引用:フジ自転車
フジの歴史
岡崎久次郎氏
引用:Wikipedia
フジは、1899年に岡崎久次郎(おかざきゅうじろう)氏が「日米商店」を創業したのが始まりです。当時は名前の通り、懐中電灯などのアメリカの商品を輸入販売をしていました。1906年には、イギリスのラッジ社の自転車の輸入をはじめ「ラージ」という商標で販売します。(この時ラッジではなくラージとしたのは、ラッジの発音が難しかったからだそうです。)そして、1928年には、商標をラージから富士に改称しました。
この時代の代表モデルは、日本のみならずアジア諸国でも人気となった「覇王号」です。この覇王号は、当時では珍しいクロモリ(クロムモリブデン鋼)製で当時一般的だった、鉄製と比較して軽量でした。また、この覇王号はレトロ自転車好きの間で、現在でも人気な車種の一つです。
覇王号
引用:フジ自転車
1951年に商号を日米富士自転車株式会社に改称します。富士レーサー等の競技用自転車を開発する一方、富士フラッシャーシリーズなどの自転車を発売します。フラッシャー自転車というのは、当時流行った多数のライト、多数のメーター類を搭載した分かりやすく言うと、「中二病全開な自転車」です。フラッシャー自転車の中には、時速25㎞以上出すと警告音の出る(パナソニック製)ような面白い機能を備えたモデルが多数あり、当時のカタログを見るだけでも楽しいです。
富士フラッシャーのリアライト
引用:フジ自転車
フジは、1970年代に本格的に海外に進出し、特にアメリカでフジのロードバイクは人気になります。1980年には、米誌コンシューマーリポート(消費者組織が発行している月刊誌)でフジのロードバイク「S12S」が1位を獲得するほどの人気となります。
また、チタンフレームの自転車を早く(世界初?)から生産したメーカーでもあり、シマノのコンポーネント「デュラエース」を最初に搭載したメーカーでもあります。
その後、1996年に株式会社東食に吸収合併されます。しかし、翌年の1997年に東食が倒産し、東食はカーギルジャパンとなり、自転車部門は、アメリカのアドバンスドスポーツ社のブランドの一つ、「フジバイクス」となります。ちなみにアドバンスドスポーツ社のブランドには、トライアスロン用自転車で有名なメーカー「ケストレル」もあります。
アメリカ資本となったフジは、これまで以上に競技用自転車に力を入れ、2009年にチーム「フジセルベット」(後のジェオックスTMC)に機材を供給、グランツールへの挑戦が始まります。2009年、2010年にブエルタ・ア・エスパーニャに出場し、2011年には「ジェオックスTMC」の「フアン・ホセ・コーボ」がブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝という活躍します。しかし、フアン・ホセ・コーボのこの記録は、2019年にドーピング違反が確定し失格処分となり、2位だった「クリス・フルーム」が繰り上げで2011年大会の総合優勝者となっています。
フアン・ホセ・コーボ
引用:Wikipedia
2012年には、アジア初のUCIプロコンチネンタルチームである「チャンピオンシステムプロサイクリングチーム」に機材を供給。2015年には、フジが機材供給をする「カハ・ルラル=セグロスRGA」がブエルタ・ア・エスパーニャに出場し、フジとしては4度目の出場となりました。また、日本のUCIコンチネンタルチームであり、2021年の全日本選手権優勝した「草場啓吾」選手が所属する「愛三工業レーシングチーム」に機材を供給しています。
愛三工業レーシングチーム
引用:愛三工業レーシングチーム
フジのロードバイク
そんなフジのロードバイクを紹介していきます。
まずは、フジのフラッグシップモデル、「軽量オールラウンドバイクSL1.1」。世界最軽量のバイクを作ることをコンセプトに開発されたこのバイクは、フレーム重量695gという軽量性を持ちながら、フジの開発したC15と呼ばれる軽量高剛性のカーボンを使用し十分な剛性をもった、軽量性と剛性を両立しているロードバイクです。2015年のブエルタ・ア・エスパーニャでは、このバイクの前モデルSLに乗るオマール・フライレが山岳賞を獲得するなど十分な実力をもったバイクです。そして、このバイクの最も凄いところは、十分な性能を持ちながら26万円(フレームセット)という圧倒的なコストパフォーマンスです。他のメーカーのハイエンドモデルのフレームセットが30万~60万円することを考えると圧倒的コストパフォーマンスと言って良いでしょう。
SL1.1
引用:フジ自転車
続いて、フジのエアロロードバイク、「トランソニック1.1」。先ほどのSL1.1と同様のC15カーボンを使用し、ダウンチューブの中央が絞られた独特な形状をしたエアロロードバイクです。このバイクも34万円(フレームセット)とハイエンドエアロロードバイクとして、良好なコストパフォーマンスを誇ります。
トランソニック1.1
引用:フジ自転車
ロードバイクに乗り始めると、気になるバイクが出て来ます。それは、タイムトライアルバイクです。そして、TTバイクについて調べてみると絶望します、フレームセット価格で50万円以上は当たり前、100万円を超えるものもあります。そんな値段を調べて絶望した人に検討してみて欲しいのがフジのTTバイク、「ノーコムストレート1.1」です。長期間の風洞実験により、エアロダイナミクスを追求したこのバイクは、フジの最速バイクであり、C15カーボンより剛性で優れるC10カーボンを採用し、高い剛性を実現しています。そして、値段は29万円(フレームセット)とTTバイクとして破格の値段です。
ノーコムストレート1.1
引用:フジ自転車
他にもフジではコストパフォーマンスの優れたエントリーグレードのロードバイクも販売しているから、初めて買うロードバイクとしてお勧めです。
また、フジの珍しいサービスとして、「リミックス」と呼ばれるカラーオーダーサービスがあります。これは、86万通り以上の組合せで世界に一台だけのカラーリングのロードバイクを作ることができます。
以上が日本とも関係の深いメーカー「フジ」の簡単な解説です。
次回は、トレックを解説予定です。