パナソニックサムネ

【Panasonic】第7回ロードバイクメーカー解説

今回は、ロードバイクメーカーとしては、マイナーなパナソニックを解説していきます。

パナソニックと言えば、電池、家電、建築業が有名ですが、実は自転車も作っています。

パナソニック引用:パナソニック株式会社

パナソニックグループで自転車を生産している会社は、「パナソニックサイクルテック」という会社で、電動自転車が有名です。ロードバイクのようにフレームにメーカー名がでかでかと書いていないため、余り気づきませんがパナソニックと書かれた電動自転車は街中でよく見かけます。

電動自転車引用:パナソニックサイクルテック株式会社

ちなみに、ロードバイク用タイヤやチューブで有名な「パナレーサー」は、元パナソニックのグループ会社(2015年にグループを離脱)で、このことからパナソニックが自転車に関連する事業をしていることが分かると思います。

パナレーサー
引用:パナレーサー株式会社

この記事を読んで、パナソニックがロードバイクを作ったことを初めて知った人の中には、第5回で解説した「ヨネックス」のように、最近ロードバイクを作り始めた?と思う人もいるかもしれません。
しかし、そんなことはなく、実はパナソニックのロードバイクは、過去にツールドフランスでマイヨジョーヌを獲得するほどの活躍をしています。
では、なぜそんなメーカーが現在ロードバイク業界で余り有名では、ないのか?
それは、ロードバイクの素材の主流が変わっていったことが原因です。

Pansonic歴史

パナソニックの自転車に関することだけ抜き出して、簡単に歴史を解説していきます。
パナソニックの創業者である、松下幸之助(生誕1894年)は、小学校を4年で中退し、9歳で火鉢店に奉公に出されます。
その後、奉公先を自転車店に移しました。
この経験から、自転車に思入れがあったんです。そして、1952年にナショナル自転車工業株式会社を設立しました。
現在のパナソニックサイクルテックに改名したのは、2006年です。

松下幸之助松下幸之助氏
引用:ウィキペディア

1965年には、国際レース参戦を目指し、日本のトップレーサーをテスターとして採用、レースで闘いながら世界に通用するバイクの製作を目指しました。1990年~92年にかけて、オランダのプロチーム「チームパナソニック」に機材を供給しました。
そして1990年、ツールドフランスに初参戦にしてスプリント賞を獲得、同年のパリルーベ(石畳の地獄が有名なレース)では、優勝にも輝いています。

パリ~ルーべ引用:CapoVelo.com | Jean-Marie Wampers

1991、92年には、ツールドフランスでステージ優勝を重ね、日本のロードバイクメーカーとしては、初のマイヨジョーヌ(数日維持)を獲得しました。その後は、バブル崩壊などの影響もあり欧州のレースに参加することは、無くなりました。

Pansonicロードバイクの素材

クロモリ

このような、実績のあるメーカーが現在では、ロードバイクを作っていることがあまり有名ではない理由。それは、この時代のロードバイクのメイン素材はアルミに加えクロモリだったためです。
クロモリというのは、クロムモリブデン鋼のことで、鉄に僅かなクロム、モリブデンを添加した合金のことです。
パナソニックでは、このクロモリとチタンを使用したロードバイクを生産してます。
その後、ロードバイクの素材の主流はアルミやカーボンに変わっていき、クロモリを使用したロードバイクは徐々に廃れていきました。

panasonic引用:パナソニックサイクルテック株式会社

では、そのようなクロモリのロードバイクにはどのような特徴があるのでしょうか?

クロモリの素材としての特徴は、アルミと違って素材がしなやかで、振動吸収性がよいです。
一方、剛性を確保するために素材を厚くする必要があるため、アルミフレームと比べると重いフレームとなってしまいます。また、素材の特性として、アルミと比較して腐食が速く、錆びやすいといったデメリットもあります。しかし、しっかりメンテナンスをすれば、アルミ、カーボンフレームの自転車よりも長い数十年乗れると言われています。
クロモリフレームの珍しい特徴として、フレームを修理することが可能といったことがあります。
例えば、カーボンやアルミフレームが破損してしまうと、基本的にその自転車を直すことは不可能ですが、クロモリの場合は、凹んだ部分を引っ張って元に戻したり、フレーム破断の場合でも、破断したパイプを交換することで修理が可能です。
クロモリのロードバイクはその独特の形状(細いパイプ)から、この見た目が好きでクロモリロードが好きな人もいます。
以上がクロモリロードの一般的な特徴です。

パナソニックのクロモリは、通称「パナモリ」と呼ばれ、独自の特徴があります。
パナモリは、ダブルバテッドチューブ、という力のかかる両端を厚く、中央部を薄くすることで、軽さと高強度、高剛性を実現しています。

ダブルバテッドチューブ引用:パナソニックサイクルテック株式会社

また、クロモリロードが破損する場合は熱の影響によってもろくなる溶接部付近で破損することが多いですが、パナソニックでは、温度管理が難しい低温銀ロー付け溶接(650℃)をおこなっており、熱による影響を抑えています。大阪・柏原市にある自社工房で、国産パイプの切断から始まり、溶接、塗装、仮組みまでの工程を、少数精鋭の熟練職人の手により一台一台受注生産を行っています。
以上がパナソニックのクロモリフレームの概要です。


チタン

パナソニック自転車引用:パナソニックサイクルテック株式会社

続いて、パナソニックの扱っているもう一つの素材チタンについて解説していきます。
クロモリフレームは、レース等では使うには正直性能が不足していますが、チタンフレームは、十分レース等にも対応できる性能をもっています。
チタンは、アルミと比較して軽くて、剛性が高く、錆びにくいといったメリットがあります。一方、デメリットととしては、加工しにくく、コストパフォーマンスが悪いといったことがあります。

詳しく解説していきます。
まず、実はチタンはアルミより重いです。
数行前で、軽いって言ったじゃないか、と思うかもしれませんが…
アルミの比重は、2.7g/㎤、それと比較してチタンの比重は4.5g/㎤と体積当たり約1.7倍ほど重いです。
では、なぜ、メリットとしてアルミと比較して「軽い」と言ったかというと、引張強度が違うからです。
パナソニックのチタンフレームに主に使われているチタンは、チタン325(3%のアルミと2.5%のバナジウムを付加)というチタン合金です。
一方アルミフレームのロードバイクでは、アルミ合金、6061アルミ(Al-Mg-Si系)が使われることが多いです。
このアルミとチタンの引張強度を比較すると、6061アルミは、310N/㎟、チタン325は、661N/㎟とチタンはアルミの2倍以上の強度を持っていることがわかります。そのため、同じ強度のフレームを作る場合は、チタンの場合は、アルミフレームと比較して、フレーム重量を軽くすることができます。
また、剛性を表すヤング率も6061アルミは、約68Gpa、チタン325は、約100Gpaと剛性も高いです。
(ここで言う剛性は、フレームとしての剛性ではなく素材としての剛性のことです。例えば、アルミは素材としての剛性は低いですが、アルミパイプの直径を太くするなどしてフレームの形状としての剛性は高いです。)
アルミチタン比較

ただ、ロードバイクのフレームとしてのチタンフレームは、パナソニックのフラグシップモデルFRTC02でもフレーム重量1230g(550mm)と超軽量といった程では、ありません。(参考:アルミロードバイクの最高峰キャノンデールのCADD13は、フレーム重量1158g)
チタンフレームは、強度という意味であればこれ以上の軽量化をすることも可能と言われますが、チタンを薄くし過ぎると溶接部から割れてしまうことがあるため、さらに、チタンフレームはチタンのもう一つの特性を生かす意味でも極端な軽量化は行いません。
もう一つの特性、それは、腐食に強く錆びにくい、また金属疲労が起きにくいといった特性です。この特性により、チタンフレームは一生モノなどと言われることもあります。(実際は数十年程度で買い替えるのが良いです。)

チタンフレームの乗り心地は、クロモリのようなしなやかなバネ感のある独特な乗り心地といわれ、長距離のロードレース等に向いています。パナソニックのチタンフレーム独自の技術としては、ペダリングを繰り返す際、ダウンチューブとシートチューブにかかる応力を解析し生まれた「3Dオプティマム・Xバテッド」があります。これは、応力の集中する部分をX型に保持することで、極上のしなやかさを生み出しつつ、剛性の向上とフレームの軽量化を実現しています。

チタン解説引用:パナソニックサイクルテック株式会社

以上がパナソニックが生産しているロードバイクの素材、クロモリとチタンの簡単な解説です。

Pansonicのロードバイク


以上のようなクロモリやチタンといった、今では珍しいタイプのロードバイクを作っているパナソニック最大の特徴は、POS(パナソニックオーダーシステム)です。
POSはサイズからカラーまでオーダーメイドできるシステムです。他のメーカーでも、カラーをオーダーメイドできることはありますが、POSではフレームを10mm刻みのサイズに対応し(身長140cm~200cm台まで対応)手足の長さ等の細かな身体の違いにも対応できます。
そのため、パナソニックのロードバイクを購入するには、まずPOSに対応した自転車店に行き、身長、股下、腕長、肩幅などを計測して、シートチューブ長、トップチューブ長、ステム長、クランク長、ハンドル幅などを算出してフレームサイズを決定します。
また、公式サイト上でもPOSを体験することができ、自分だけのロードバイクを作ることができます。

POS引用:パナソニックサイクルテック株式会社

クロモリやチタンのロードバイクやオーダーメイドのロードバイクに乗ってみたい人は、パナソニックのロードバイクお勧めです。

次回は、BMCを解説予定です。

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