UCIが2021年からスーパータックや腕をハンドルに置くポジションを禁止にしましたね。では、現状どのポジションが最も速いのでしょうか?
また、ポジションを変えると速さにどのくらい影響するのかを解説していきます。
ポジションごとのエアロ効果
基本的な4つのポジションを空気抵抗が多い順に紹介していきます。(参考動画はこちら)
ヒルクライム時に持つことが多く、上ハンを持って上体が上がる「トップ」(Tops)
色々な場面において最も握ることの多いブラケットを持つ「ブラケットポジション」(Hoods)
平坦やスプリントで握ることが多く、下ハンを持つ「ドロップ」(Drops)
現在では、UCIルールで禁止されていますが、エアロ効果の高い「ハンドルに腕を置く」(Aero Tuck)
実験結果
時速40kmで距離40kmを走った際においてトップ基準にブラケットは90秒短縮、ドロップは155秒短縮、ハンドルに腕を置くは335秒短縮という結果になりました。↓こちらのグラフは上に行くほど空気抵抗が少ないポジションです。
ハンドルに腕を置く凄まじい…
空気抵抗を最も削減することが出来るアイテムの1つであるスキンスーツですら96秒短縮です。
それに比べてトップからドロップポジションに変えるだけで155秒も短縮できるので、ポジションによるエアロ効果は凄まじいことが分かります。
ポジションを変えるのは無料だし!
この実験だとドロップポジションが最も速いということになりますが、実はもっと速いポジションがあります。
それがプロ選手も先頭を引くときや逃げているときなどに頻繁に見る、肘を曲げてブラケットを持つブラケットエアロポジションです。
aerococahの実験においてもブラケットエアロポジションが最も速い(UCIルール内)ことが証明されています。ドロップポジションに比べて21wも削減することが出来ます。(↓Aero hoods=ブラケットエアロポジション、45km/h)

※aerocoachの実験は屋外(トラック)で行っているため、実験誤差が大きくなると思われます。
効果
ポジションによってどれだけのタイム差が生まれるかを見てみましょう。まずは平地からです。(トップで走行時282.7w)
ポジションだけでこれだけの差が付きます。
ブラケットエアロはドロップポジションと比べても抜きん出ています。ハンドルに腕を置く最強ポジションにもかなり近い値を出しています。
平地においてはブラケットエアロしか勝たん!
ずっと同じ姿勢では疲れてしまいますが、スティーヴ・カミングスは強度が低いトレーニングでもこのブラケットエアロポジションで走り、体に慣れさせていたようです。
平地は空気抵抗が大きいのでポジションが重要になるのは分かりますが、ヒルクライムではどうでしょうか?

ヒルクライムでは姿勢の楽なトップやブラケットポジションの方が多いと思いますが、どの程度タイムが変わるのかをヒルクライマーの聖地であるヤビツ峠で見てみましょう。(トップで走行時280.9w)
ヤビツ峠をこのペースで登れる方は少ないと思いますが、トップでは無くブラケットポジションで走ることによって16秒短縮することができます。
実際のコースではアップダウンや急勾配などもあるので、ヒルクライムでは基本はブラケットポジションで走り、急勾配で速度が遅いときには影響が少ないのでトップ等を使い腰を伸ばして、平坦基調や下りではブラケットエアロポジションで走るのが模範解答的な走りだと思われます。
※ポジションは空気抵抗だけでなく、使う筋肉が変わったり、ストレッチにもなるので一概にこれが一番速いとは言えません。
下り坂でのエアロポジション
下り坂においてのポジションは現時点でのUCIルールにおいてはこちらのポジションが最も速いと思われます。(参考動画はこちら)
このポジションはドロップポジション↓が61km/hの場合+3km/hの64km/h出せるという結果になりました。
ちなみに禁止されているスーパータックのポジションは+7km/hの68km/h出すことができます…
頭の位置
頭の位置によっても空力は変わってきます。一番左を基準とし、下を向く、頭を低くするの3種類で比較します。(参考動画はこちら)
実験結果を時速40kmで距離40km走った際の短縮時間に換算すると、下を向くと28秒短縮、頭を低くすると74秒短縮できるという結果になりました。
頭の位置を低くし、前を向くことによって前方投影面積を減らし、ヘルメットのエアロ効果が最適化され速く走ることができます。※TTヘルメットでの実験ですが、理論的には他のヘルメットにも当てはめると思います。
ケイデンス・ペダルの位置
続いてはケイデンス(回転数)やペダルの位置におけるエアロ効果についてです。
ケイデンス
ケイデンスによるエアロ効果の違いはあるのでしょうか?50rpmと100rpmで比較した結果、ケイデンスによる空気抵抗の違いはありませんでした。(rpm=1分間の回転数)(参考動画はこちら)
速くペダルを回した方が空気抵抗が大きくなりそうですが、空気抵抗に影響は無いので安心して自身の好きなケイデンスで走ってください!
ペダルの位置
続いてはペダルの位置によって空気抵抗は変わるのかという実験です。-6%の下り坂を想定しています。(参考動画はこちら)
時速59kmでペダルを回しながら走っているのを基準とします。
片足を下げて、足を縦の位置に固定した際は1.0km/hも速度が下がるという結果になりました。
足を横にして水平に固定した際は0.3km/h速度が上がるという結果になりました。
ある程度スピードが出ている下り坂ではペダルを回すより、水平で固定。最悪なのはペダルを縦で固定すること。
まとめ・考察
ずっと同じ姿勢はかなりきついですが、空力的には基本的にずっとブラケットエアロポジションを握り、そこそこな下り坂では体を縮めてペダルを漕がないのが最も速いということになります。
ヒルクライムにおいても空力的にはトップよりブラケットポジションのほうが速く走ることができます。
状況に合わせて適切なポジションを取ることによって速く走ることができます。そのためには体幹やストレッチも非常に重要になってきます。
頭は空力的にも安全的にも前を見るようにしましょう~!(位置を低くすると空力アップ!)
計算条件
上記計算に使用した条件です。
また、上記計算では数値に若干のずれが生じることがあります。
※CdA:0.277[m^2]は、ドロップハンドルを握っている体勢における値です。ヤビツ峠では5.5%