東レサムネ

【東レ】ロードバイク素材メーカー解説

今回は、ロードバイク【素材】メーカー解説ということで、「東レ」を解説していきます。

皆さんは、ツールドフランス(2015年)で90%以上のロードバイクで使用されていた、日本企業の製品がなんだがわかりますか?
ロードバイク、日本企業、と言えば「シマノ」のコンポーネントが有名ですが、ツールドフランス(2015年)での使用率は77%です。シマノを上回る使用率となったのは、ロードバイクのフレームの素材である東レの「炭素繊維」です。
現在のハイエンドロードバイクの素材はほぼ100%が炭素繊維でできていますが、その大半に東レの炭素繊維が使用されています。

引用:東レ株式会社

炭素繊維とは

東レは、1926年創業(当時は東洋レーヨン)の日本の化学企業で合成繊維や合成樹脂を作っている会社です。身近な物では浄水器等が有名だと思います。
ロードバイク業界ではよく、「カーボン」という単語を耳にしますがそもそも「カーボン」とは何でしょうか?イメージとしては、軽くて強度が強いものといったイメージがあると思います。
ロードバイク関連でカーボンと言った場合、カーボンファイバー(=炭素繊維)のことを指すことが多いです。
炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(アクリル繊維の一種で、セーターや毛布などに使用されているもの)などの有機繊維を不活性性ガス中(窒素中等)で加熱し、炭化させた繊維で、何度も加熱することで炭素以外の元素を脱離させ、最終的には90%以上の炭素を含有した繊維のことを指します。

炭素繊維炭素繊維
引用:東レ株式会社

炭素繊維というと最新素材のイメージが強いですが、意外と歴史は古く、1959年にはアメリカでレーヨン(女性用の肌着等に使用されている化学繊維)から炭素繊維が作られています。しかし、レーヨンから作られるレーヨン系炭素繊維は、現在では廃れています。その後、1961年には現在の産業技術総合研究所(産総研)の進藤昭男(しんどうあきお)氏によって、先ほどの説明したポリアクリロニトリル(PAN)を炭化することで作る、炭素繊維、PAN系炭素繊維が発明されます。

産総研引用:国立研究開発法人産業技術総合研究所

現在、市販されている炭素繊維の内、約90%以上がこのPAN系炭素繊維で、ロードバイクに主に使われている炭素繊維もこのPAN系炭素繊維です。そして、東レは、このPAN系炭素繊維の世界最大王手です。
また、1961年には群馬大学の大谷杉郎(おおたにすぎお)氏によって、熱に強い等の特性をもつピッチ系炭素繊維が発明されており、現在使われている炭素繊維は日本発の技術です。

そんな、炭素繊維の特長は冒頭でも言った通り、軽くて強いことです。具体的には、鉄の比が7.8g/cm^3、軽いと言われる金属アルミでも2.7g/cm^3であるのに対して、炭素繊維は1.8 g/と非常に軽いことがわかります。
引張強度を密度で割った比強度(数値が大きければ軽くて強い)も、鉄の合金で約100kN·m/kg以下、アルミ合金で約220 kN·m/kg、一方炭素繊維は1000 kN·m/kg以上と強度と軽さを両立していることがわかります。(比強度の具体的な数値の情報が少なく、数値はおおよそです。また、炭素繊維は種類によって比強度が大きく異なります。)
炭素繊維比較

さらに、炭素繊維は、化学的、熱的に安定なので、疲労しない、錆びないといったメリットもあります。一方、短所としては、値段が高いこと、加工が難しいことなどがあります。これがカーボンフレームのロードバイクがアルミフレームのものより値段が高い理由の一つです。ちなみに、炭素繊維は繊維状態のままではなく、炭素繊維強化プラスチック、炭素繊維強化炭素複合材料などとして利用されますが、ここら辺の話はカーボンフレーム解説等をやる機会があればその際解説させていただきます。

東レの炭素繊維

炭素繊維を東レが本格的に生産を開始したのは、1971年です。この年、東レは現在も販売されている、高性能炭素繊維「トレカ」を発売します。この時、発売されたトレカ「T300」は、ボーイング757767、スペースシャトル等に利用されました。

トレカ引用:東レ株式会社
ボーイング767ボーイング757
引用:三菱重工業株式会社

炭素繊維がロードバイク等のスポーツ自転車に使われ初めたのは、1980年代で、この時はフロントフォークなどの一部で使用される程度でした。カーボンフレームが大きく注目されたのは、ランスアームストロンがトレックのカーボンフレームバイク「5500(当時世界最軽量級フレームで重量1.11)に乗り、ツールドフランスで優勝を重ねた2000年代初頭です。(ただ、その後、ドーピング違反によって優勝は取り消されていますが)

5500トレック「5500」
引用:Yahooショッピング

 このような結果から、カーボンフレームのロードバイクは増えていきます。既に他分野で使用されていた、東レの炭素繊維は自転車にも多く使われるようになり、現在では、自転車(ロードバイク、MTB)に使用される炭素繊維の70%弱を東レのトレカが占めています。トレカには、様々な種類がありますが、ロードバイクによく使用されているのは、T700、T800、T1000、T1100です。基本的に数字が大きいほど、性能が高く値段も高いです。炭素繊維の違いを知る上で重要なのが、弾性率と引張強度です。
・弾性率は、変形のしにくさを表すもので、分かりやすく言うと、剛性のことです。
・引張強度は、引っ張った時にどの程度の力で破断するかを示すものです。
炭素繊維の弾性率は、20~70t範囲で、東レのトレカは2030tの中弾性の炭素繊維です。弾性率だけ考えるともっと数値の高い高弾性の炭素繊維を使用したほうが、ロードバイクの性能が上がりそうですが(剛性が上がる)、一般的に炭素繊維は、弾性率を上げると引張強度が低下してしまうため(破断しやすくなる)、ロードバイクには、中弾性の炭素繊維が使用されることが多いです。
ただ、例外もあり、ロードバイクによっては、弾性率60~65tの炭素繊維を使用したフレームもあります。ピナレロの「ドグマ65.1」などです。この65は弾性率65tを示しており非常に高弾性の炭素繊維を使用していることがわかります。このドグマ65.1に使用された炭素繊維も東レの65t級の超高弾性炭素繊維です。

ドグマ65.1ピナレロ「ドグマ65.1」
引用:ピナレロ

このような例外はありますが、ミドルグレードのロードバイクにはT700T800(弾性率2430)が弾性率と引張強度のバランスが良いため、使用されることが多いです。一方、ツールドフランスなどで使用されているハイエンドロードバイクには、T1000T1100が使用されていることが多いです。特にT1100は、20年に一度の素材と言われるほどの性能を誇ります。炭素繊維は一般的に弾性率を上げると、引張強度が低下すると先ほど説明しましたが、T1100はその常識を打ち破り、高い弾性でありながら、高い引張強度を実現しています。下のグラフは東レ炭素繊維の弾性率と引張強度を表したグラフです。グラフからもT1100が高い弾性率と引張強度を両立していることが分かると思います。

引用:東レ株式会社

このような性能がロードバイクにとって何がいいかというと、T700T800以上に、強度が強いのでフレームを薄く作れるため軽量化でき、それでいて高い剛性を維持できるということです。ただし、これは素材レベルの話であって、形状や製法によっても大きく剛性等は変わる点には注意が必要です。
ロードバイクを素材レベルで選んでみるのも面白いかもしれません。

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